二次創作小説
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スカイガールズ IF 風の求め

第3部 失くさずにすんだもの

3ページ目


「少し頭を冷やしてきなさい」
20分後、雷神から開放されたクラウリア・サーク・サウディ、島月一衣の両名には60分のランニングが命じられた。
「全く……実戦だったら死んでたかもしれないのに……」
 そう思うとゾッとする。それに……今期の4人は良く似ている、と思う。昔の私達に。ただひとり、欠けているのが可憐のポジションというのは因果な話だが。
「過保護なのよね、結局私は」
 実践であのような醜態は論外。だが、それだけではない。これは瑛花の経験だが、護るべき者、助けるべき相手を救えなかったら、それはとても辛いこと。そうならないためには、少しでも強くあるしかない。心も、身体も。
「なるほど。今のが音に聞く“雷光”か」
 後ろからの低い声が瑛花の思考を中断した。そこにいたのは引き締まった雰囲気を持つ長身の男性。
「飛崎少佐、お久しぶりです。到着は今夜と聞いていましたが?」
「少し予定が繰り上がってな。久しぶりだな、一条准尉……いや、今は少尉か」
「はい」
 かつての戦友であるふたりは互いに敬礼する。
「さっきのは今期の訓練生達か。なかなか賑やかな連中だな」
「お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありません」
「そうでもないさ。一期生や二期生の連中も最初こそ頼りなかったが、誰も脱落しなかった。そして、今じゃ全員が世界中で活躍してる。“雷光”の名を聞かない日はないくらいだ」
 “雷光”。一条瑛花の二つ名。言い出したのが誰かはわからない。かつて雷神のパイロットとして人類を救った英雄。大胆かつ繊細な操縦で機体の性能差を軽くひっくり返す技量。そして、厳しくも、多くの訓練生達に慕われる有能なWW指導教官としての功績等々。瑛花を知るものは皆が納得するだろう。ただひとり、瑛花本人を除いては。
「できれば、その名は聞きたくありません」
 目を伏せる。いまだに忘れることのできない、4年前のこと。あの日、自分は何もできなかった。欠けがえの無い仲間ひとり救えなかった。彼女はネスト攻略戦で行方不明、という扱いになっている。
冬后と一緒に、可憐の唯一の肉親である兄に報告をした時、彼は泣くことも怒ることも、瑛花達を責めることもしなかった。ただ一言「妹は誰かの役に立てましたか?」とだけ。そして、彼の望み――可憐は、讃えられることを望まない――で可憐の功績は伏せられることになった。
  “雷光”の名はその事実を、自分の無力さを思い出させるから。
「そうか……。ところで、冬后は一緒じゃないのか?」
 強引とも思える話題逸らしだが、瑛花にも都合がよかった。
「大佐でしたら、今は軍本部です」
「何だと?」
 飛崎が眉をひそめる。
「突然のことでしたから。昨夜、呼び出しがあってそのまますぐに」
「そうか……」
「あの、飛崎少佐?」
 少し悩んでから飛崎はトーンを落として話した。
「そのことについて冬后は何か言ってたか?」
「いえ、何も」
「なら、一条提督からは?」
「父から?聞いていませんが」
「そうか」
 再び考え込む飛崎。
「飛崎少佐?」
「込み入った話だ。どこか耳が気にならない場所は?」
「でしたら、私の私室に」

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