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| スカイガールズ IF 風の求め 第2部 失くしたもの
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「プラズマレーザー、発射まで……10、9、8、7――」
ブリッジでは七恵が可憐と同じカウントダウンを行っていた。
「ソニックダイバー各機、射線上から離脱を確認!」
たくみの報告。そして――
「――2、1、……来ます!」
「死ぬなよ、お前等」
モニターから目を外すこと無く、冬后がつぶやいた。
「来ます!」
可憐の合図に重なって3機のビックバイパーが青白い閃光――通称ハイパーショット――を解き放つ。3本の火線は互いに、干渉、共振を起こし、一筋の奔流となって“黒雲”に突き刺さり、減衰と引き換えに触れるワーム全てを文字通り消滅させていく。
「距離6277までのワーム群、全て消滅を確認。進路……確保しました。アフターバーナーの起動及びカットのタイミング、算出完了」
「行くわよ!全機、アフターバーナー、オン!」
可憐の報告と同時に瑛花の指示が飛ぶ。それに合わせて、5機のソニックダイバーがアフターバーナーに点火し、最高速度マッハ2.5、超音速の弾丸となって“黒雲”へと飛び込む。
「全機、減速!Aモードにシフト!」
突入してすぐに、瑛花の指示が飛ぶ。だが、それは作戦失敗によるものではない。最高速のソニックダイバーはわずか10秒で6000もの距離をつめることができる。が、それは桁外れの運動エネルギーを宿している、とも言える。そして高速であればあるほど回避行動は困難となる。減速が遅れ、前方に残っているワームを避けられなかった場合、ソニックダイバーはその速度ゆえに、大破、飛散することになる。無論、減速が早すぎればそれだけ稼げる距離が減ることになる。ナノスキンの活動限界という枷を抱えている以上それもまた、致命的となる。だが、そんな状況で可憐は最良のタイミングを――1/1000秒単位で――弾き出していた。
「どきなさい!」「吹っ飛べー!」「いきます!」
Aモードにシフトした雷神、風神、バッハ3機による斉射が三方へと解き放たれ、ビームキャノンやガトリング砲、空対空ミサイル、ロケット弾、レーザー砲、ナノマシン弾といった多種の火線が周辺のワームを吹き飛ばしていく。
「音羽さん、アイーシャさん、今です!」
「うん!」
その隙を突いて零神とシューニアが高度ゼロへ降下する。
それを見届けると、残る3機のソニックダイバーは無数のワームへと向き直る。
「さて、これだけ的がいれば照準も必要無さそうね」
瑛花が不敵に笑い、雷神が2丁のAMライフルを構える。
「今のエリーゼ達を止めたいならこの100倍は用意してきなさいよね」
エリーゼがどこか楽しそうに言い放ち、バッハのマニピュレーターがMVランスを掴む。
「音羽さん達に遅れるわけにはいきませんよね。でも、ペース配分には気をつけて」
可憐は油断無く宙域のあらゆるデータを分析、把握していく。
「仕掛けるぞ!虫ケラどもを潰す」
上空からは飛崎隊のビックバイパーも“黒雲”への攻撃を開始していた。
「フォーメーションE!俺と森山がトップ、工藤、仕上げは任せる」
「工藤、了解」「森山、了解」
飛崎の指示に従い、ビックバイパーが逆三角に編隊、ジェットコースターのループを思わせる軌跡を空に描く。
「行けっ!」
先陣の飛崎、森山機が垂直に近い角度で“黒雲”に向かい、機体下部に取り付けられた弾頭各2発を切り離す。放たれた弾頭は推進装置に加速され、“黒雲”上部へ到達する。そして、爆発することなく、ワームをなぎ倒しながら“黒雲”内部への穴を開けていく。
後詰めの工藤機がその穴目がけて機体下部の弾頭2発を切り離す。先のものとは異なり、工藤機の弾頭はただ、放物線を描いて“黒雲”に吸い込まれていく。そして――
“黒雲”を内部から吹き飛ばすように青白い閃光と轟音が吹き上がった。
最初に飛崎、森山機が放ったのは空対空貫通弾。通称フォトントゥーピド。弾頭内に火薬の代わりに金属を詰め、“貫く”ことのみに特化した兵器。破壊力という点では従来のミサイルに大きく劣る上に非常に重いため装備するだけで機体の機動性を低下させる、という欠点もある。
工藤機が投下したのは空対地プラズマエネルギー炸裂弾。通称スプレッドボム。弾頭内に――ビックバイパーのプラズマレーザーと同種のエネルギーを開放可能な――装置を収めた弾頭であり、対称に接触と同時に周囲に高エネルギーを撒き散らす。こちらにも欠点がある。ひとつは装置が大きすぎること。そのため、推進装置を取り付けることが出来ず、下方に投下することしか出来ないという点。もうひとつは非常に不安定であるという点。外部からの衝撃でも起動してしまうことがある。つまり、パイロットは文字通り爆弾を抱えてしまうことになるのである。
このような欠点だらけの兵器が作られたのは――前大戦で使用された大量破壊兵器でなければ太刀打ち出来ないような――超大型ワームに対抗するためである。フォトントゥーピドで穴を開け、内部からスプレッドボムを炸裂させることで大量破壊兵器クラスの破壊力を発揮し超大型ワームを消滅――Erase――させる。この戦術――フォーメーションE――は本来そういった目的で発案されたものであるが、飛崎達は“黒雲”を超大型ワームに見立てて使用したわけである。
「おりゃああああっ!!」
音羽の気合と共に、横薙ぎに振るわれたMVソードが3体のワームをまとめて両断し、その破片が塵となって水中に沈んでいく。
「アイーシャ、大丈夫?」
それを確認すると音羽は、すぐ後ろを飛ぶシューニアに寄り添い、声をかける。
「……私は大丈夫だ。音羽は?」
「あたしは絶好調だよ」
ODDディスプレイの片隅にある2237の表示に目を向ける。
「見ててよ、あと2キロちょい。絶対、護りきるから」
アイーシャの息は徐々に上がり始めている。けれど、それでも音羽を気遣う。そんな姿がさらに音羽の心を熱くする。
「道を……開けろーーーっ!」
荒々しくも、流れるような太刀筋がさらに2体のワームを塵と変えていく。ODDディスプレイにはナノスキンの残り時間が8:07と、映っていた。
(あと8分強、これなら行ける!)
「消えなさい!」
雷神の20ミリガトリング砲が火を噴き、
「うじゃうじゃうじゃうじゃと……うっとーしいって言ってるでしょ!」
そこへ飛び込んだバッハがMVランスを構えたままで竜巻のごとく回転し、ワームを蹴散らす。
「させません!」
そして、回転後のわずかな隙を風神のAMライフルが埋めていく。
「動きやすくなってる?さっき後ろで光ったのと関係あるのかな」
「はい、ビックバイパー、特に飛崎少佐の部隊の攻撃でワーム群の約4%が消滅しました。攻龍も射程圏内に到達、砲撃を開始しています」
「皆頑張ってくれてるのね。音羽達は」
瑛花の問いを受け、可憐が素早く状況を報告する。
「音羽さんは本調子、いえ、これまでに無いほどです。アイーシャさんのバイタルもほぼ正常域。精神面で互いに良い影響を及ぼしているみたいですね」
「じゃあこのままいけば……」
「はい、ですが油断は……あっ!?来ます。上から7、下から5。瑛花さんは上、エリーゼさんは下を」
「了解」「OK!」
すぐさま軌道を算出、迎撃パターンを雷神、バッハに送る。
「主砲、撃て」
門脇の静かな号令とともに、攻龍の主砲――62口径76ミリ全自動砲が火を噴く。
「着弾を確認」
たくみの報告が跳ぶ。
「藤枝、ソニックダイバー隊の現在位置は?」
七恵は手を止めること無く答える。
「現在ネストまで約2000の位置にいます。目標タイムを少し上回っています」
「最後の最後まで油断するなよ。予想外の大安売り、それが戦場だ」
少し安心したような七恵を冬后が一喝した。
「りょ、了解」
「雷跡!魚雷来ます!」
「迎撃用意。対衝撃」続き
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