二次創作小説
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KANRI

スカイガールズ IF 風の求め

第1部 失くしたくないもの

2ページ目


「オ、オトハ。えっと、その、もう大丈夫なの?」
「そ、そうね。心配してたのよ」
「オカゲサマデ。シンパイカケテゴメンネ。あたしから飛ぶことを取ったらなにも残らないしさ……」
 取ってつけたように気遣うふたりには棒読みな謝罪と冷たい視線が漏れなく贈られた。
「どーせあたしは飛ぶ事しか能がありませんよ」
「で、ですよね。少し言いすぎですよね」
 必死で取り繕う可憐。だがそこへの視線も氷点下なものだった。
「そうだよね……。“少し”だけ言いすぎだよね。……“少し”しか言いすぎじゃないんだよね」
「うぅ……」
 可憐のフォロー、失敗。
「アイーシャは喜んでくれるよね?」
「わからない。だが……この感情は……不快ではない……と思う」
「あーあ。アイーシャだけだよ。あたしのことわかってくれるのはさ」
 そのままアイーシャの前に座り込んだ音羽は床に平仮名で、のの字を書き始めた。

 一方で音羽をいじけさせてしまった3名はというと――

「ほら、エイカがおかしなこと言うからオトハいじけちゃったよ。こういうときはリーダーの出番でしょ」
「都合のいい時ばかりリーダー扱いして……。もとはといえばあなたが怯えてたのが原因でしょ。ここはエリーゼが行くべきだわ」
「怯えてない!じゃ、じゃあさ、間を取ってカレンが」
「それ、文法的におかしいと思うんですけど……」
罪のなすりあいをしていた。

「はぁ、わかりました。私が行きます……」

が、結局は可憐が引き受けたようである。意訳――押しの弱さゆえに断りきれなかった。

(けれど……兄様、私はいったいどうしたら……)
 必死に頭の中を検索する。
(なにか音羽さんの喜ぶことは……)
 記憶の中から音羽が楽しそうにしていた場面を探す。
(何かを食べている時はいつも楽しそうにしていたけれど、今は出撃前だし……)
 さらには兄との手紙で交わした言葉、在学中に書いた論文、追浜に来てからの経験、攻龍に乗ってからのこと、それら全ての記憶から使えそうなことを引き出す。そして――
(あった!)
「あ、あの、音羽さん」
「何?」
 音羽のジト目に一瞬ひるむが、意を決する。深呼吸を一度、そして――右手を固く握り締めると勢いよく突き上げた。

 それは、らしくない――というよりは普段の可憐から180℃かけ離れた仕草だったろう。けれど、問題の音羽はというと――目を輝かせていた。
「そうそう!そうだよね。さっすが可憐ちゃん。あたしが教えたことちゃんと覚えてて実行してくれるんだもん」
 泣いたカラスがなんとやらで満面の笑みを浮かべ、拳を振り上げる音羽。
「エリーゼも!」
 こういったノリが好きらしいエリーゼも右手を掲げる。
「かなり意外ね。可憐がこういうことするのって」
「ま、前に音羽さんが教えてくれたんです。なにか大きなことに向かう前にはこうするのが常識だって。私、そういうのはよく知らなくて……」
 慣れないことをしたのがよほど恥ずかしかったのか、あるいは自分の無知を恥じているのか。可憐の耳は真っ赤に染まっていた。
「……可憐。音羽には見習うべきところが無いとは言わない。でも……鵜呑みにするのはやめたほうがいいわ」
 呆れ気味の助言。
「そうなんですか?」
「ま、私もこういうの、嫌いじゃないけど」
 瑛花も右手を握ると3人の手に添える。
「ほら、アイーシャも」
 よくわからない、といった表情であったが音羽にうながされるまま、アイーシャも倣う。
「よーーっし!それじゃ――」
『ソニックダイバー隊各員は至急ブリッジに集合してください。繰り返します、ソニックダイバー隊各員は至急ブリッジに集合してください』
「ええーーーっ!!せっかく盛り上がってきたのにーー!!」
 突然のアナウンスに台詞を遮られた音羽が露骨に不満を吐き出す。
「しかたないでしょ。ワームには私たちの都合なんて関係ないんだから」
「それはそうですけど〜、って、ワームのせいなんですか?」
「このタイミングで呼び出し、ということは、そう考えるのが自然よ。作戦になにかあったのかもしれないわね。急ぎましょう」
「はーい」「OK!」「……わかった」
 返ってきた返事は3つ。もうひとり、可憐は立ち尽くしていた。
「可憐」
 瑛花の呼びかけにも返事は無い。
「……まさか……だとしたら……は、おと……を……りこむ……なん……?」
「可憐!!」
「えっ!?あ、はい。なんでしょうか?」
 2度目の呼びかけで返事が来たが可憐は明らかにうわの空、といった風であった。
「ブリッジに行けば情報もあるはず。急ぐわよ」
「は、はい」

続き