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| スカイガールズ IF 風の求め 第1部 失くしたくないもの
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「あーもう!誰か何とか言ってよ!!」
ソニックダイバー隊控え室、通称ピストに流れていた沈黙に耐えられず、突然に大声を上げたのは――ソニックダイバー バッハシュテルツェV1パイロットのエリーゼ・フォン・ディートリッヒだった。
「何とかって……なにを言えばいいのよ?」
さらさらのブロンドを振りまわして絶叫するエリーゼに推定温度3℃の視線を向けながらも律儀に答えたのは同じくソニックダイバー 雷神の操者である一条瑛花。艶やかな黒髪を無造作に束ねた少女である。
「今、私達は作戦行動前の待機中なのよ。作戦に備えて集中力を高めておくべきでしょ」
確かに現在はワームの工場とおぼしき造られた島、ネスト攻略前の待機中である以上瑛花の意見は至極もっともなもの。けれど、それなら最初から叫びはしないだろうしエリーゼという少女はそれで素直に納得できるような気性の持ち主でもなかった。が、それでも瑛花を相手にするのは分が悪いと判断したのだろう。同じ部屋にいる他のふたり――ソニックダイバー 風神を駆る園宮可憐と今回の作戦において鍵となる人物、ソニックダイバー シューニア・カスタムに搭乗するアイーシャ・クリシュナムへと視線を移す。
無言でキーボードをたたき続けている少女。柔らかなプラチナブロンドを後ろで左右に、小さく束ねているのが可憐。同じく無言で目を閉じている――褐色の肌プラス額に赤点という容姿に相まって瞑想しているようにも見える――アイーシャ。ふたりを見比べると、やや遠慮がちに声をかける。
「あ、あのさ。何か話してたほうが楽しいよね?」
「え、えっと……それじゃあ、現在の状況を……」
「却下」
可憐の提案は――極めて真っ当ではあったが――コンマ1秒で切り捨てられた。
「そうじゃなくてさー。もっとこう、楽しい話題って――」
「いい加減にしなさい!!」
なおも食い下がろうとするエリーゼに瑛花の雷が落ちた。
「だって……――なんだもん」
「エリーゼさん?」
うつむいてつぶやいた言葉。弱々しい言葉に反応したのは可憐。
「不安なの!!だって、今回の作戦すごく危険なんだよ!それで、悪い想像ばっかり浮かんでくるし……いつもだったらさ、オトハが騒いでくれるから……それで……」
「確かに、今までとはわけが違いますよね。クアドラロックを成功させればそれで勝利、とはいきませんし」
「だからもしオトハが間に合わな――」
「大丈夫」
「カレン?」
エリーゼの言葉を可憐が遮る。静かに、穏やかに。
「大丈夫です。それに――」
抱えた端末に目を向けて、続ける。
「もし音羽さんが間に合わなかったら今やっていることが全部無駄になってしまいますし」
「これって……もしかして!」
モニターを覗き込んだエリーゼが何かに気付いた。
「はい、作戦をシミュレートしていました。でも4人で出る場合のことは少しも考えていませんでしたから」
「カレン……」
「そういうの、可憐らしくない気もするけど」
そう言う瑛花も言葉とは裏腹で顔には笑みを浮かべていた。
「音羽さんは――必ず来ます。根拠なんて無い。でも――」
真っ直ぐにエリーゼを見詰める。
「信じられる。だから大丈夫」
そして、そこには確かな強さがあった。
「うん、そう……だよね。ごめんね、カレン。エイカとアイーシャも。そうだよね、信じるって決めたばっかりなのに」
「可憐の言うとおりだわ。もっとも、根拠ならあるけど」
「そう……なんですか?」
「ええ。あなたにはわからない?」
わからないらしい可憐に苦笑しつつ。
「残念ながら」
「もったいつけないで教えてよ」
「簡単なことよ」
可憐、エリーゼの顔をみまわすと――
「来ないわけないじゃない。あのフライト馬鹿が」
言い切った。
「そ、そうだよね」
「そうよ。第一、あの音羽から飛ぶことを取ったら何が残るの?」
「そうだよね!」
「え、えーと……さすがにそれは少し言いすぎのような気がしなくも――」
やたらと楽しそうに同意するエリーゼとやや引き気味の可憐、そして相変わらず無言のアイーシャ。けれど、世の中には『噂をすればなんとやら』という言葉が存在するわけで……。
バタン!
控え室の扉が勢いよく開け放たれた。例えるならば「ノック?エチケット?なにそれ?それって美味しいの?」といった具合に。
そこに立っていたのはソニックダイバー 零神の主にしてちょうど話題になっていた人物。桜野音羽その人だった。
続き
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