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| 射手の名前 1ページ目
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「はぁ……」
エルシオール格納庫の片隅にたたずむ人影。その口からこぼれたのは深いため息だった。
現在の時刻は夜11時を少しすぎた頃。
「6番機。私の……紋章機」
白き月に停泊中ということもあってか、艦内は寝静まり、あたりには他に誰もいない。最低限以外の照明も落とされた薄暗い格納庫に浮かぶのは、細長い砲身が特徴的なシルエット。群青にカラーリングされた紋章機、GA006。
その傍らで揺れる髪がささやかな光を反射して、薄闇の中でなお、艶やかな黒に輝く。
6番機のパイロット。烏丸ちとせは表情を曇らせていた。
「6番機のコードネーム……。どうしたら……」
彼女を悩ませているのは古くからトランスバール皇国軍内に存在するひとつの慣例。
“戦闘機のコードネームはその搭乗者が決定する”というもの。
それを苦痛と思ってるわけじゃない。6番機のコードネームを決められる。そう聞いた日は興奮のあまり一睡もできなかった。それも本当。だけど……。
そして、ちとせの中にはすでにひとつの候補が存在しているのも事実。
「その名前は6番機にはふさわしいのかもしれない。でも……」
“私”には不相応なんじゃ……。
そんな考えが日に日に大きくなっていった。かといって他の案は浮かばず、時間ばかりが流れて、提出期限は明日に迫り、床に就いても全く眠ることもできずに、なかば無意識のうちにふらふらと格納庫に足をむけていた。
「はぁ……」
再びため息がこぼれた。
「先輩方も……こんな経験をしたのかな?」
と、視線を巡らせる。薄闇の中には、6番機とよく似たフォルムをもつ5色の機体が音も無くたたずんでいた。
若草色の機体。
「ヴァニラ先輩の機体。GA005、ハーベスター」
紫色の機体。
「フォルテ先輩の機体。GA004、ハッピートリガー」
空色の機体。
「ミント先輩の機体。GA003、トリックマスター」
紅色の機体。
「ランファ先輩の機体。GA002、カンフーファイター」
桜色の機体。
「GA001、ラッキースター。ミルフィーユ・桜葉先輩の機体」
英雄タクト・マイヤーズ司令のもと、エオニア戦役を終結へと導いた偉大な先輩達。入れ替わるように退役された桜葉先輩のことはよく知らないけれど……記録で見た戦功は――紋章機の性能を考えたとしても――信じられないほどのものだった。
それぞれの名を背負うのにふさわしい方々だと思う。
なら……。
私は?
と、結局ちとせの思考はそこへループしてしまう。
続き
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