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| GALAXY ANGEL
― The meaning of the name ― 5話 折れたもの、折れないモノ 2ページ目
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『――――らすま!』
「うぅ……」
ノイズ混じりの声。悲鳴にも近い叫びに、ちとせの意識は引き戻されていた。
「くっ……なにが……あぅっ!?」
混乱する思考の中で無意識に姿勢を正そうとした瞬間。左肩に激痛が、口からは苦悶が飛び出す。
「そうだった……私は……」
痛みが引き金となって思い出した。
「巨大艦の攻撃を避けきれなくて……。はっ!?フェイカーさん、サクリファイスは?」
かなりの衝撃を受けていたはずだが、幸い計器類は生きていたようだ。右手でパネルに触れると、すぐにサクリファイスの無事が映し出された。
『おい!なに呑気に寝てやがる。聞こえてるんだろ?寝ぼけてないでとりあえず返事しろ!おい、烏丸!』
「……呑気に眠ってもいませんし寝ぼけてもいません!」
ダメージを受けたはずみだったのか、着信のみになっていた通信を双方向に切り替えると、いきなり聞こえてきたのはラスクの怒鳴り声。言っている内容にカチンときたちとせは――ラスクの無事に安堵するより先に――思わず言い返してしまう。
『お前………………良かった』
少しだけの間を置いてそれだけ返ってきた。わずかな沈黙がなにを意味するのか、ちとせにも伝わっていた。痛いほどに。
「ごめんなさい。心配かけて」
『ま、まあいいさ』
今更ながらラスクが口調をいつものそれに戻した。
『で、大丈夫か?』
「エトランゼは無事だと思います。クロノスペースに入るのを確認しましたから。シャープシューターは…………あまり大丈夫ではないです」
いくつものレッドサインが灯るディスプレイを見つめるうち、ちとせの顔が曇っていく。
「メインバーニアの2番が完全に停止。バランサーも4、6、7番がやられました。あとは、コックピット付近の装甲にも……」
『それもあるけど……』
ため息混じり、呆れ混じりの声。
『お前自身だ!さっきやられた時、意識飛んでたろ?お前』
再び怒鳴られた。
左肩に軽く右手を当ててみる。それだけなのに、左半身全体にじわりとした痛みが広がった。
「っ!………………操縦には支障ありません」
額に脂汗が浮かぶのもこの時になって初めて認識できた。けれどそのあたりのことは、言葉に出さない。
『…………………今は信用しといてやる。帰ったら診察を――んなっ!?』
これっぽっちも信用できん、と言わんばかりの間。言っている内容とは裏腹に、疑いを超えて確信に満ちた声。けれどラスクのそんなセリフは、途中で途切れた。
そして、ちとせも全く同じに息を呑む。
『2発目だと!?』
巨大艦の内部には再び、高エネルギーが発生しつつあった。
「あれを連発できるなんて……。でも、今度は少し時間がかかります。先の数値と比較……発射は約52秒後です」
2度目ということもあってか、いくらかの落ち着きを取り戻したちとせは素早く算出していく。
『で、どうするよ?』
「ここは退きましょう」
判断は即座に。
「エトランゼが離脱した方向はわかっています。フェイカーさんはそちらへ」
『俺“は”って……お前はどうするんだよ?』
疑わしげな声が返ってきた。
「第2射の直前まで残ります。少しでもデータを集めておきたいので。……次のために」
『……なら、俺も付き合う。データ取りなら、ふたりがかりの方がいい。ふた手に別れれば、上手くやれば1回分多くデータが取れる』
「それなら……試してみたいことがあります。少し、無理をお願いできますか?」
『……危険です。とは、言わないのな』
「聞き入れてくれそうもないひとには。言っても無駄ですから」
『くくく、一本取られたな』
愉快そうに肩をすくめるラスクの姿が脳裏に浮かぶ。そして、どこか不謹慎でもある言葉を交わすうち、ちとせはある種の感覚――まるで、タクトや他のエンジェルたちが傍らにいるような錯覚を覚え始めていた。
『ご注文は?』
「釣り上げてください」
『オーライ。釣れるかどうかまではわからんが……やってみる』
それはさながらに阿吽の呼吸。ごくシンプルな言葉だけで成すべきことを理解したラスクは、言い終えると同時に行動を、巨大艦への接近を開始する。
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