二次創作小説
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KANRI

GALAXY ANGEL ― The meaning of the name ―

4話 現れる脅威 1ページ目


 エトランゼのブリッジには重い空気が立ち込めていた。
「艦長……本当に……戦闘になるんでしょうか?」
 不安に耐えきれずオペレーターのひとり、センサー担当のライム・ニース准尉がそんなつぶやきをもらした。
 エトランゼクルーの最年少。ブリッジの紅一点である彼女はつい半年前に士官学校を卒業したばかりで実際の戦闘をまだ知らない。そして、間もなく遭遇するかもしれない実戦への不安にかられていた。
 最初に探査ポッドが破壊されてからちょうど20日。エトランゼは件の艦隊の進路上、まもなく不明艦隊がドライブアウトするであろうポイントに到着していた。18隻からなる不明艦隊の目的はいまだはっきりしないが、その行く先にはクロノゲートが、さらにその先には惑星S1があることはすでに疑いようのないことだった。さらに不明艦隊は呼びかけに一切応じず、接触させたポッドは問答無用と言わんばかりに破壊。そして、現状のペースであれば次にゲートが開く三日前にはゲートに到着する、といった状況。幸い、といえるのかどうかはともかく不明艦隊はエトランゼとくらべてかなり足が遅かったが。
 彼女だけではない。ラフレンスを除けば、他のブリッジクルーもほとんど実戦経験の無い者ばかり。
誰もが緊張と不安でガチガチになっていた。

 ――人選の余地がほとんど無かったとはいえ……この雰囲気は良くないな。

 とりあえず彼らを落ちつかせよう。そう考えたラフレンスは口を開こうとした。が、それよりも早く、ブリッジへの通信がつながってきた。

『やはり……不安ですか?』

 透明感のある涼やかな声。それだけで聞く者の心を落ち着けるような響き。どこか気品のある穏やかな瞳。発信元は格納庫のシャープシューター。烏丸ちとせ大尉その人だった。
「か、烏丸大尉……。その……それは……」
 最初に不安を口にしたライムはEDENのジュノー出身。かつて自分たちを救ってくれた英雄のひとりである烏丸ちとせに秘かな憧れを抱いていた。だから必死に取り繕おうとするもカラ回るばかりで、全く上手くいっていなかった。
『ふふ、まずは深呼吸でもしてみてください』
 そんな彼女にちとせは、少しいたずらっぽくウインク。
「は、はいっ!?」
『慌てなくても大丈夫。さあ、吸って、吐いて』
「はい。すぅー、はぁー」
 ちとせの声は静かで、穏やかに。なだめるように響いていく。彼女だけでなく、他のオペレーター達もそんな声に少しずつ、平静さを取り戻しつつあった。
『まだ戦闘になると決まったわけではありませんし、ね?』
「あ……はい」
 いきなり同じ事を言われても受け入れることはできなかったかもしれない。けれど、少しばかり落ちつきを取り戻していたライムはそう聞き入れることができた。
『もし戦闘になったとしても大丈夫。皆さんも訓練は受けていますよね?その通りにすればいいんです。よく言われることですけど、本当のことなんですよ。だから、慌てないで』
 そこで軽く間を取ると、ちとせは表情に凛としたものを纏う。
『それに、私とてムーンエンジェルに名を連ねる者。不明艦の性能は未知数ですが、30くらいまでなら……たとえひとりでも遅れは取りません。ご心配なく。エトランゼは、私が護ってみせます』
『それは少しひどくないですか。大尉?』
 また別の通信が割り込む。
『大尉と比べたらまだ未熟ではありますけど、自分だってこの4ヶ月間。ずっと烏丸大尉に鍛えられてきたんです。ほんの少しでもかまいませんから……アテにしてはもらえませんか?』
 今度はサクリファイス――ラスク・フェイカー少尉からだった。
 ちとせは少しだけ考えるそぶりを見せる。
『……そうですね。訂正します。エトランゼは私とフェイカー少尉で必ず護ります。ですから落ち着いて、訓練通りにお願いしますね。皆さんのフォローがあれば……敵がどれほどいようとも、夢にも負けたりしませんよ』
「はいっ!」
 最後にそう締めくくって通信は切れた。

 ――見事なものだな。私ではこうはいくまい。

 ラフレンスは内心で舌を巻いていた。実際に戦闘になることを前提とした上で、それでもブリッジの雰囲気はすっかり落ち着いたものになっていたから。

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