二次創作小説
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KANRI

GALAXY ANGEL ― The meaning of the name ―

3話 発端 3ページ目


 なんだかんだではあったが、充実した昼食を済ませると、ふたりはちとせの部屋で仕事の話に取りかかった。
「ところで、昨日頂いた航路図ですけど――」
「ああ、またダメ出しよろしく」
「いえ、今回のはよく出来ていましたよ。帰りに使ってみて誤差の修正は必要でしょうけど、あとは申し分無いです。本当に、助かっています」
 ギブアンドテイクではあるのだが、ちとせは律義に礼を言う。
「俺にも利があってやってることだよ。そっちの調子はどうだ?」
 テーブルの上に置かれたキーボードを叩きながら聞き返す。
 ラスクがエトランゼに配属となった日、ちとせが用意した折りたたみの椅子とテーブルは、ラスク専用作業机兼お茶会セットとして、この部屋の一部と化していた。
「8割、というところですね。SKIAの文明圏は惑星ひとつ。技術レベルは4。大気の様子からすると、化石燃料の使用がさかんなようです」
「………………少し不自然じゃないか?」
 目の前のディスプレイに送られてきたデータを眺めつつ、ラスクは眉をひそめた。
「と、いいますと?」
「PHOSは4、ALTEは2、RUINは3、今回のSKIAは4。どれも技術レベルが低い気がするんだ。……600年前のクロノ・クエイクで各平行宇宙の文明が一気に後退した。これはあってるよな?」
「はい、間違いありません……けど?」
 あっている、というよりはEDENやNEUEでは常識とすら言える。
「なら、EDENとNEUEの技術レベルは高すぎないか?」
「でも、それは――」
「白き月、だろ?」
「はい。およそ400年前、トランスバール本星に現れた白き月の恩恵でEDENは急速に発展しました。NEUEはそのEDENとの交流が始まってからそれなりに時間がたっています。ですから、このふたつが突出しているのは特に不自然では無いと思いますけど?」

 ちなみに、技術レベルとは――トランスバール皇国が版図を広げていた時代、便宜上使われていた技術力の尺度のことで、平行宇宙間の交流においても流用されている。9はクロノドライブによる星系間の行き来。8は星系内の行き来。7は衛星への進出が普及している状態をそれぞれ示している。

「本当に自然なのか?」
 ラスクはそこに疑問を感じていた。
「なら、400年位前。白き月が現れる直前のトランスバール本星は?」
「記録では確か……あ!?」
 ちとせもまた、ラスクが言わんとしていることに気づいた。
「そう。やっぱり技術レベルは4。白き月云々は無視してもだ、当時の本星と今のSKIA……えっと、惑星S1って仮称してる星の技術レベルが同じなんだ。400年の差があるにもかかわらず」
「だとすると……NEUEはさらにおかしくないですか?EDENとの交流が始まる前でも、技術レベルは7から8くらいでしたよ?白き月のような存在は確認されていないのに」
「よくよく考えてみれば――人が残ってる宇宙が168の中で6個しか無いってのがそもそも普通なのか?クロノ・クエイクの影響でそこから約180年間、クロノスペースに関わる技術が使えなくなった。その結果滅ぶこと自体は別におかしくはない。けど、その割合が9割超えってのはどうなんだ?」
「言われてみれば……」
「ま、確率論的にはアリなのかもしれないけどな。今思いついたような疑問でもあるし」
 と、締めくくる。
「……散々思わせぶりに言っておいて最後はそれですか……。でも、興味深いです。今回の調査が終わったら一緒に調べて……」
 みませんか?の部分は言葉に出来なかった。
今回で、あと数日で平行宇宙の調査は終わる。そして、ラスクがちとせに同行している理由――PWの稼働データもすでに充分集まっていた。だから、こうしていられるのもあとわずかなのだ。
 ちとせはそれを、なるべく考えないようにしてはいた。が、なにかのはずみで、つい頭に浮かんでしまうのは――別れが迫っていることへの寂しさからだろうか。ましてやこの4ヶ月間、訓練と調査隊の仕事――起きている時間の大半を共にしていたのだから。そして、その時間がとても楽しく、とても充実していたのだから。名残が惜しくなるほどに。
「ごめんなさい……」
「謝るなよ」

 SKIAの調査に取り掛かってからは、こんなふうに、言葉に詰まってしまうことも少なくなかった。
 ピピッ!ピピッ!
まるでそんな空気を読んだように、備えつけのインターホンが鳴った。
「少し、失礼しますね」
 パネルに触れると、白髪交じりの初老、ラフレンスの顔が映し出された。
「烏丸です。どうかされましたか?」
「少し意見を聞きたいことができた。フェイカー少尉もそこにいるのか?」
「はい。今からうかがいましょうか?」
「ああ、私の部屋に来てくれ。詳しくはそこで話す」
「了解しました。5分程で向かいます」

「と、言う訳なんですけど……」
 ラスクの方へと向きなおる。
「オーライ。ひとまず切り上げるか。……にしても、あまりおおっぴらに出来ない話なのか?ブリッジじゃなくて艦長室になんてさ」
「そこまでは……。とりあえず、行ってみましょう。フェイカー少尉」
「了解です。烏丸大尉」
 すっかり慣れたもので、ちとせもまたラスクの呼び方を変更する。
 ようやくいつもの空気が戻ってきたことに揃って胸を撫で下ろした。なにかきっかけでもあれば普段通りに戻ることは容易かったから。それを維持することも。

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