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| GALAXY ANGEL
― The meaning of the name ― 3話 発端 1ページ目
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「だーーー、畜生!またかよ!」
サクリファイスのコックピットを模したシミュレーターの中で、ラスク・フェイカーは頭を掻き毟っていた。
彼がエトランゼに身を置くようになってから、はや4ヶ月。平行宇宙の調査に同行するのも4度目となり、この艦にもすっかり愛着がわいていた。
いつかの商談通り、ちとせの仕事を手伝い、浮いた時間で行う対戦訓練もすっかり日常の一部として組み込まれていた。が、その戦績はというと――
「また大台かよ……」
散々なものだった。絶賛更新中の連敗記録がめでたくなくも100回を越えたのが約3週間前。今日でついに120回達成となっていた。
「確かにあいつ自身、俺のやり口に慣れてきてはいるけど……」
ラスクが得意とする戦術――奇襲奇策――は、同じ相手には何度も通用するものではない。複数の策を組み合わせることで、無数のバリエーションを創ることは出来ているものの、ちとせ自身がFakeそのものに対応し始めていることにはラスクも感じていた。
もっとも、慣れという点では、お互い様と言えるかもしれない。ラスクもまた、ちとせの射撃精度には適応しつつあったのだから。
だから、負けが込んでいるのには別に理由がある。
「絶対領域、か」
通常のちとせ相手であれば、優勢とはいかずとも、そこそこには渡り合えている。だが、絶対領域に入ったちとせと対した場合、10秒ともたずに撃墜されてしまっていた。
「反則じみてるよな、アレ」
もともとの精度自体が――ラスク曰く――異常なので、たとえ絶対領域に入っても射撃の正確さそのものは別段変わりは無い。厄介なのは、照準合わせにかかる時間がゼロになる、という点。射線に入った時には、すでに発射されているということ、だった。
ちとせが言うには「今発射したらどこへ飛んでいくのか、なぜかわかるんです」とのことだが、やられる側としては堪ったものではない。
確実に急所を捉えた射撃が、いきなりに、連続で飛んでくるのだから。それも、初速に弾速、貫通力と、三拍子そろったフェイタルアローが、だ。
着弾までには、コンマ数秒のラグがあることも影響してか、初弾はさほど問題無くかわせる。2発目も避けきれないことはない。が、出来るのはそこまで。完全に体制を崩されてしまい、続く3発目にはまるで反応できなくなり、その結果が秒殺、だった。
「それでもまだ、3本の矢が残ってるんだろ……。だいたいが、なんで俺相手だと100発100中で絶対領域が発動するんだよ?連携戦闘の訓練だと、ただの一度も入れないのに。俺に恨みでもあるのかよ?……っと、いかんいかん」
発言がだんだんとネガティブになってきた気がする。とりあえず、ラスクは思考を切り上げることにした。
「せめて、あいつといられる内に一本くらいは取りたかったんだがな……。夢のまた夢、なのかね?」
今の自分は、ひどく寂しげな顔をしているだろうな。そんな風に思いながら。
一方その頃、――本人は全くの無自覚だが――120連勝を達成したちとせはというと、いつものように汗を拭い、温めのスポーツドリンクをゆっくりと飲んでいた。
「まだ出てこない……。きっと考察してるんですね。本当に、熱心な人」
などと、的外れ気味の独り言を口にしていた。射撃の精度と、思考の的中率は、必ずしも一致はしないようである。
「絶対領域……。少しずつだけど……見えてきた気がする」
瞬間的に、ではあるが、足を踏み入れつつある領域へと思考を巡らせる。
以前、ABSOLUTEに戻った際、絶対領域という現象について調べたことがあった。
ゾーン、聖域、無我の境地、等々。呼び名はともかく、それらしいものはちらほらと見つかりはした。が、どうやらそれは、都市伝説的なものらしく、ラスクから聞いた以上のことはわからずじまいに終わった。ルシャーティあたりに頼めば詳しくわかったかもしれないが、最近は特に忙しいと聞いており、それを知った上で頼めるちとせでもなかった。
そんな中で幸いだったのが、これまたラスクの存在。理由は不明であるが、ラスクを敵にした場合――所要時間の差はあるが――100%の割合で絶対領域に至ることが出来たから。
そして、回数を重ねるうち、漠然とではあるが、絶対領域というものを掴みつつあった。
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