二次創作小説
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GALAXY ANGEL ― The meaning of the name ―

幕間 大尉の理由と犠牲の理由 3ページ目


 重く、深い沈黙が降りた。
 聞かなきゃよかった。アルモはそう思った。
「と、ところで――」
 必死に他の話題を探す。
「もうひとつ気になったんですけど……量産紋章機の試作機とそのパイロットも同行してますよね、ちとせさんに」
「それがどうかしたのか?」
「その機体、なんでサクリファイスなんてコードネームなのかなって」
「…………またか」
 レスターは、やれやれとため息を吐き出す。同じ質問を受けた回数は、両手で数えられる数を超えていた。
「あ、いえ……。無理に聞きたいってわけでも――」
 反応を見て、とっさにフォローを入れる。が――
「かまわんさ。別にややこしい話じゃない。重い話でもないからな」
 レスターの言葉は否定的なものではなかった。
「提出期限近くになっても決まらなかった。そんな時、たまたま映画のコマーシャルを見かけたそうだ。そして、その響きが気に入ったと」
「ま、まさか……」
 アルモの頭には、ひとつの仮説が浮かんでいた。
 少し前のこと、アルモは話題の映画をチェックしていた。想い人を誘うなら、どんなものがいいだろうか、と考えながら。一緒に見に行くなんて120%無理だろうけど、などとも思っていたが。
 その中で見つけたもの。あらすじを読んだ限りでは、アルモ的にストライクゾーンど真ん中で、取り寄せたソフトが先日届いた作品があった。そのタイトルが――
「サクリファイス……」
「それが由来だよ……」
「そ、それは……ある意味すごい人ですね……」
 聞くんじゃなかった。
今度は別の意味で、聞いた事を後悔した。
「えっと……たしか……フェイカー少尉、でしたよね。どんな人なんですか?」
「俺もそれほど話したわけじゃないが……。話した限りではごく真面目な男だったぞ。一番印象に残ってるのが髪の色だったくらいだ」
 ちとせが聞いたなら――いえ、そんなことはないですから――などと否定したことだろう。
 もちろん、レスターの印象にある“真面目な男”とは対上官用取り繕いモードのラスク。を指す。
「へぇ、ちなみに……どんな色だったんですか?」
「銀髪。……いや、白髪と言うべきか。そんな感じだった」
「真っ白な髪……」
 思い当たることがあった。
「そういえば……さっき食堂で見たんですけど……男のひとにしては珍しく長い髪ですか?そのひとって」
「ああ、多分彼がフェイカー少尉だ。ちとせに同行してるから、今はここにいるはずだろう」
「……なんか……マイヤーズ長官やミルフィーユさんと妙に意気投合して……大騒ぎしてましたけど……。となりでちとせさんは……頭、抱えてました」
「……人は見かけによらない、ということか……」
 アルモの報告した事実にレスターの頬が引きつる。それでも、半信半疑といった風ではあったが。
「確かに、あの人だったら……映画のタイトルをそのまま自分の機体につけるくらい……やるかなって……言われてみればそんな気は……しますね……」
「全く、どんな映画なのか知らんが、せめて言葉の意味くらいは調べてからにしてほしいものだ」
「そうですよね……。ん?」
 不意に、アルモの脳内で、裸電球が光った。

 ――だめでもともとだし……よしっ!

 こっそりと手を握りしめ、決心する。
「あ、あのですね……」
「どうした?」
「今の話に出てきた……サクリファイスっていう映画なんですけど……。じ、実は……その……あのですね……」
 決心したはいいが、思うように言葉に出来ない。
「熱でもあるのか?」
 真っ赤になって、裏返り気味の声を出す秘書にレスターがかけたのは、180度ばかり的を外れた、けれど非常に彼らしい言葉だった。
「そうじゃなくて……その映画のソフト……持ってるんです……だから……えっと……」
 だめもとで、などと思っていても、いざとなると言葉にならない。
また、ここまで言えば普通は続く言葉もわかりそうなものなのだが、一方のレスターは、気づいていない。ふたりの仲に全く進展が無いのは、はたしてどちらのせいなのだろうか。
「こ……ここ…………こここここここ……」
「ココがどうかしたのか?」
「じゃなくて!今度……い、い……一緒に…………見ませんか!」
 最後はヤケクソ気味にではあるが、どうにか言い切った。
「ふむ、普段は映画など見ないんだがな」
 一世一代の告白(?)に返ってきたのはすげない返事。
「ですよね……」
 予想はしていても、やはり肩が落ちる。
「たまにはいいかもしれんな」
「へ……?」
「今日の夜なら、いくらか時間も空いている」
「あの……それって……」
 恐る恐る、聞いてみる。
「もちろん、お前の都合がつかないなら仕方ないさ。これでも、お前には随分苦労をかけてすまないと思っているからな」
 OKに加えて、そんな労いの言葉まで受けたアルモのテンションは跳ね上がる。もしも彼女が紋章機乗りだったなら、エンジェルフェザーくらいは余裕で出せそうな感じだ。
「いえいえいえいえいえいえいえいえっ!!!」
 だから、ぶんぶんと物凄い勢いで首を振る。
「今夜ですね?もちろん空いてます!というか、空かせます!そりゃあもう、なんとしてでも!」
 途端に目を輝かせ始めたアルモに圧倒されつつも、レスターは――よくわからんが、やる気があるのはいいことだな――などと、実に彼らしいことを考えていた。
「よーしっ!気合入ってきたー!じゃあ、今日の仕事、ちゃっちゃと片付けちゃいましょうね!」
「あ、ああ……」



 その日、アルモはこの上なく機嫌がよかった。が、数時間後、それ以上の落胆を味わうことになるのだが。
 理由はというと――エルシオール時代から幾度となく繰り返されてきたこと。ある人物が書類を溜め込んだせいでレスターにしわ寄せがやってきたから、である。
 それから数日間。元凶となった某長官がアルモの不機嫌オーラに苛まれ続けたのは、言うまでも無かった。

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