二次創作小説
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GALAXY ANGEL ― The meaning of the name ―

幕間 大尉の理由と犠牲の理由 1ページ目


 その日、レスター・クールダラスは上機嫌らしかった。
「何かいいことでもあったんですか?」
 だから、アルモ――彼の秘書――はそんなことを聞いてみた。
「ん?顔に出てたか」
 本人には自覚は無かったようだが。
「いえ、他の人にはわからないと思いますけど……なんとなくそんな風に見えたので」
 ――補佐官のことは、もう5年も……ずっと見ていましたから。なんでも知っているんです。
 毎度のことではあるが、後半部分は言葉に出来なかった。もっとも、鈍感大王(タクト命名)の二つ名をほしいままにするレスター相手なら、口に出しても「確かに、お前と“も”長い付き合いだからな」などとスルーされた可能性は極めて高いだろう。
「喜ばしい報せがあった。見てみるといい」
 と、レスターはひと束の書類を差し出す。
「これって……PHOSの調査報告書ですよね。さっきちとせさんが提出した」
 アルモにも見覚えがあった。というか、半日前に自分がちとせから手渡されたものだった。
「最後の追記事項のところだ」
「えーと、なになに……」

 調査開始から42日目。人の痕跡が発見出来なかった惑星のひとつで大気圏内の飛行訓練を行った。
 飛行中、シャープシューター、サクリファイスの両機周辺にネガティブ・クロノ・フィールドと酷似した波長が自然発生、惑星に不時着した。その際、付近に人の住居を発見。ペル・オレキエッテと名乗るひとりの少年と接触。
 なお、無人惑星と誤認した理由であるが、瞬間的に発生した磁気嵐により生体スキャンをスルーしてしまったため、と考えられる。

「これ……本当にちとせさんが書いたんですか?」
 アルモの顔に胡散臭そうな色が浮かぶ。
「なぜそう思う?」
「だって……瞬間的な磁気嵐とか、ネガティブ・クロノ・フィールドが自然にとか……冗談にしては突飛すぎますし……実際そんなことが起きるなんて……」
「“確率的”にありえない、か?」
「はい」
 レスターの言葉には何か含みがあったようだが、アルモは気づかなかった。
「俺も最初は悪い冗談と思った。まあ、続きを読んでみるといい。疑問も解けるだろう」
「はい……。えーと……」

ペル・オレキエッテについて特筆すべき点。それは、彼が桜葉少佐と同様に“強運”の持ち主であるということ。また、その性質について彼が所属していた社会では“社の環”を開く能力と伝えられていたらしい。彼がふたり目のゲートキーパーである可能性は高いと考えられる。
以上の理由より、本人の同意を得て、彼を連れて帰ることとした。

 最後には、流麗な文字でUPW平行宇宙調査部隊隊長、烏丸ちとせ大尉、と書かれていた。

「もしかして……」
 ようやく思い当たることがあった。
「それを強運と結びつけたらしい。ちとせの発想にしては大胆すぎるとも思ったが……助手をしていたフェイカー少尉がな」
「ふたり目の……ゲートキーパー……」
「そうだ、確定までにはしばらくかかるそうだが、今のところ検査では否定要素はゼロとのことだ」
「そっか、そしたらミルフィーユさんも少しは自由になれますもんね」
 だから、レスターは機嫌がよさそうだったのだ。
「アレ?」
 もう一度報告書を読み返していたアルモは、小さな引っ掛かりを感じた。
「そういえば、ずっと気になってたんですけど……どうしてちとせさんって大尉なんですか?」
「急にどうした?」
「だってホラ、ミルフィーユさんは少佐だし、ランファさんにヴァニラさんもですよね?それに、フォルテさんは中佐。ミントさんは退役しちゃいましたけど、なんでちとせさんだけが階級が低いのかなぁって。……エオニア戦役の分なんですか?」
「確かに、エオニア戦役当時、ちとせはまだエンジェル隊に配属されていなかった。だから、その分だけ功績が少ない。それは事実だ。だが、それでもこれまでの功績や実力を考えれば、そこいらの少佐や中佐には劣らないよ、あいつは。実際、ルクシオールの新艦長第一候補はちとせだった」
「じゃあ……どうして……」
「怠惰や責任逃れ、であればまだよかったんだがな」
「ちとせさんの性格なら、それは無いと思いますけど……」
「その通り。本人が望んだからだ。自分にはその資格が無い、とな」
 そう口にしたレスターは、ひどく苦い顔をしていた。

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