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| GALAXY ANGEL
― The meaning of the name ― 2話 天使とペテン師 10ページ目
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「では、フェイカーさんから見て、GA006のパイロットはどうでしたか?」
「悪質」
「あ、悪質……ですか?」
即座に返ってきたのは、なかなかにヒドイ返答。20年以上生きてきた中で、ちとせが初めて言われた言葉だった。
そんな内心を知ってか知らずか。あるいは、わかっていて、わざとなのか。ラスクは淡々と続ける。
「間合いの外から一方的に、それも正確な射撃で心身を削り取っていく。近づくことすら容易じゃない。敵にする分には、これ以上タチの悪いものって無いぞ。実際」
「……そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」
軽く口を尖らせるが、ちとせも不快そうなものは浮かべていなかった。
「多分、お前には合ってると思う。けど――」
ラスクが思い出したように付け加える。
「戦闘機の運用セオリーからは……かけ離れてるよな。あれ、お前の我流か?」
空戦時代から宙間戦闘の今に至るまで、変わらないこと。戦闘機の最大の武器は、高い機動性を活かした一撃離脱にある。ちとせの戦闘スタイル、足を止めての狙撃はそれとは正反対といえるだろう。もっとも、セオリー無視という点においてはラスクの特攻まがいも似たり寄ったりなのだが。
――あれ?だとすると……シャープシューターのコンセプトって……。
一瞬、そんな考えも浮かんだが、深く考える前にちとせが話し出した。
「我流……というのか……。確かに、私が考案したものですけど……やっぱり……変でしたか?」
「変……というか……。あまりお目にかかれるもんじゃなかったから」
今度は茶化す様子も無く続ける。
「あと、レールガンしか使ってなかったろ?そこも気になった……かな?」
「そう……ですか……」
「なにかマズイことでも言ったか、俺?」
「そういうわけじゃないんです……けど……」
どうするべきか。少しだけ考える。
「相談に乗ってほしいことがあるんですけど……」
「かまわんぞ。聞くだけならタダだ」
軽くおどけてみせるが、ラスクの目は真剣だった。ちとせにはそれが嬉しかった。
「ふふ、タダでしたら話してみますね」
だからつい、そんなことを言ってしまう。
「さっき言いましたよね?レールガン以外の武装を使っていないって」
「言ったぞ」
「1年前くらいからでしょうか。シャープシューターに……違和感を感じるようになったんです。上手く言えないんですけど……こう、噛み合わない、とでも言えばいいのか……」
「……整備とか調整の問題ってことは?たしか紋章機の……えーとH.A.L.O.だっけ?あれって色々と特殊なんだろ?」
ちとせは小さく首を振る。
「私も最初はそう考えました。でも、少し前に白き月で行ったオーバーホールでも特に異常は無くて……なのに、今でも違和感は消えなくて……。長いこと実戦から離れてるから、そうも思ったんですけど……それも違ったんです」
ヴェレルの乱。影の月との最終決戦にも、ちとせはシャープシューターで参加していた。そしてそれ以降も違和感は消えるどころかますます強くなっていった。
「考える内、なんとなく感じたことがあったんです」
「それがレールガン?」
「はい。レールガン一本に絞った戦術を組み立ててみたら、なんだかしっくりくる感じだったんです」
「だから、か。で、違和感ってのは消えたのか?」
「いえ、まだ残っています。……すみません。こんなこと、タクトさんや先輩達には相談できなくて……」
やはり申し訳ないと感じていたのか、深く頭を下げる。
「謝らんでもいいよ。実際聞いてただけだ。カカシでも事足りるさ。けど……」
「けど?」
「関係あるかはともかく、気になったことならある」
「本当ですか!」
「あ、ああ。でも役立つかは知らんぞ」
「それでもかまいません!」
目を輝かせ始めたちとせに気押されつつも、ラスクは内心で失言を後悔していた。ヌカ喜びに終わるだろうな、と。だが、今更「冗談だ」と言える雰囲気でもなかった。
「さっき……とどめに撃ったろ?シャープシューターの大技。アレ、なんだ?」
「え……?あれは、フェイタルアローといって――」
「違う。向けられた方の印象だけど、お前の射撃って……まず砲の向きを合わせて、照準をつけてから発射、だろ?」
「そうですけど?」
なぜそんな事を聞くのか?まるでわからなかった。そんなのは射撃全般に言えることだろうに。
「けど、さっきの。完全に振り向きざま、それも旋回しながらだったぞ。照準合わせは無理だったはずだ。時間的にも。なのに、正確にコックピットを撃ち抜いてた。お前の性格なら、それまで手を抜いてたとは思えない」
ま、最後のは俺の願望も交じってるけどな。と付け加える。
「……えっと……。やっぱり、そういうことしてたんですよね、私」
「ですよね、って……。おぼえてないのか?明らかに違ってたぞ」
「そう言われても……。あの時は夢中で……確か……」
あの時はどんな感じだっただろう?記憶の糸をたどっていく。
「照準器を破壊されて……でも負けたくないって。そこから……あ!」
思い当たることがあった。
「急に視界が澄んでいくみたいな、そんな感じがしたんです。あとは……そう!落ち着いてるのに興奮してるみたいで……今ならなんだって出来るって。そんな風に思えたんです。……って、支離滅裂なこと言ってますね……私」
言っていて自分の発言に呆れるちとせ。が、ラスクはそうでもないようで、難しい顔で考え込んでいた。
「まさか、な。けど……ありえないことでもない……のか?」
「何か、気になることでも?」
「絶対領域。じゃないのか?ソレ」
「ABSOLUTE……ですか?」
どうしてここでそれが出てくるのか?ちとせには全くわからなかった。
「そっちの意味じゃなくて。俺も何かで聞きかじっただけだけど……。確か……ごく一部のアスリートなんかが備えてるってやつで……集中力が極限まで高まった状態、だったかな?どうにもうろおぼえなんだが。その時にものすごい記録が出たりするとかで……。さっき言ってたろ?なんでも出来るような気がしたって。そういう人たちも同じこと言ってたって。すまん、上手くまとまらなくて……」
ラスクも言っているように、お世辞にもわかりやすいとはいえない説明だった。けれど、ちとせはそれをまとめていく。
「つまりは、集中力が極限まで高まった状態を絶対領域という。その時には本来以上の実力を発揮できる。そして、全能感のようなものを感じる。こんなところですか?」
「…………さすが、烏丸先生だよ……」
下手な説明を聞いただけでスマートに翻訳してしまうあたり、さすがというべきだろう。ラスクは軽くヘコミつつも、感心した。
「それで、どうしたらその絶対領域に行けるんですか?」
「そこまではわからん。悪い……」
「そんな……謝らないでくださいよ。相談に乗ってくれただけでも感謝してますから。……詳しいことは今回の調査が終わったら調べてみますね」
「それがいいな。この艦のデータベースには、そんなことまであるとは思えないからな」
続き
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