二次創作小説
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KANRI

GALAXY ANGEL ― The meaning of the name ―

2話 天使とペテン師 2ページ目


「外した!?」
 目の前に広がるのは漆黒の宇宙空間。敵機、サクリファイスがいる方向を見つめていた瞳が大きく開かれた。
 彼我の距離はおよそ12000。シャープシューターの主兵装――長砲身レールガンの間合いに入ると同時にちとせが放った弾丸は、標的スレスレをかすめるにとどまった。
「違う」
 ぽつりとつぶやく。
 ――照準もタイミングも完璧だった。なら……。
 予想を確かめるために、さらに2発、レールガンを発射する。
 ――やっぱり……。
 2発のうち片方は当たったものの、有効打からはほど遠く、もう一方はカスリもしなかった。
 ――この距離。艦や自律制御の戦闘機相手なら、まず外さないけれど……。
 有人機はわけが違う。ちとせもまた思考を巡らせていく。
 レールガンが発射されてから12000の距離がゼロになるまでに約1秒。その間にサクリファイスは射線から逃れていた。

 ――やるからには全力で勝ちにいく。できるなら、手を抜かないでくれたら幸いだが、な。ははは。
 シミュレーターに入る前、冗談交じりに言われた言葉が脳裏をよぎった。そして……そう言った時のラスクは、少しも目が笑っていなかった。
 言われるまでも無く、ちとせには手を抜くつもりなど最初から全くない。サクリファイスの機体性能は把握していたし、試作機のテストを任せられるのならパイロットは水準以上の腕を持っていることも予想出来ていた。そしてなによりも、“花を持たせる”ような真似をしたらラスクは激怒すると、知っていたから。
 が、相手は、わずか1秒の間に、とっさの状況で、ギリギリとはいえかわしてみせた。機体の中心を正確に狙ったにも関わらず、だ。
 ちとせは素直に感心していた。
 ――間違いない。機体制御に関しては私よりもずっと上。手を抜くどころじゃない。ふところに入られたら……少しでも油断したら…………一気にやられる。
 思考を巡らせる間にもレールガンを撃ち続けるが、サクリファイスは全てに反応、直撃を避けていく。
 ――速い。行動自体もだけど……それ以上に反応が。……どう……攻める?
 士官学校時代、ラスクとは幾度もやりあってきた。様々な実技訓練で、シミュレーターでは艦隊戦や戦闘機でも。その時の経験に基づくなら、ラスクは必ず奇策でくる。ちとせはそう読んでいた。
 ――でもそれは……奇をてらっただけの策じゃない。基本を押さえた上で、ここぞというところでこちらの思惑もろともにセオリーを外してくる。それも2重3重に網を張った上で。
 そして、一度でも主導権を渡したら手遅れになる。
 実際、過去の対戦結果は“一方的にちとせが勝つ”と“ラスクのペースに翻弄されて負ける”のどちらかが大半を占めていた。
 ――私だってあの頃のままじゃない。臨機応変に対応することもおぼえた。でも、あの人だって昔のままじゃないはず。
 ――フェイタルアロー……は使えない。
 浮かんだ誘惑を振り払う。
 ――リスクが大きすぎる。弾速は速いけれど……光の弓が現れる分、タイミングも読みやすい。かわされれば、発射後の隙も大きい。あの人相手には命取りになりかねない。それなら……。
「このまま遠まきに……仕留める」
 それがちとせの結論だった。
 ――少なくとも、この距離ならむこうは何もできない……はず。あの人に手を打つ機会を与える前に……決する。

続き